自炊といえば、一人暮らしの方が自分でご飯を炊いたり料理したりして生活することですが、これからご説明する自炊はちょっと違います。もしかしたら聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、これからご説明する自炊は、本や書類などのドキュメントをデジタル形式で保存することを表します。自炊代行はとても便利なサービスですが、注意しなければならない部分もありますので、それについても含めて、自炊代行についてご説明していきます。
自炊とは、本や書類など、アナログのドキュメントをデジタル形式にして保存することを指します。現在は、本もデジタルデータとして購入することが増えましたが、本をたくさん所有している人にとっては、その保管場所などを考えるとひじょうに無駄が多く、大きな問題になっています。これらをデジタルデバイスで読めるように処理するためには、裁断しなければスキャナーで取り込むことができません。自炊にはこれらの作業も含まれます。
自炊は、元々はネット上で生まれたスラングです。その昔、P2Pソフトウェアを使って市販の書籍を配布する行為がはびこっていましたが、それを行うためにスキャンする行為自体が自炊と呼ばれていたのです。そのため、なんとなくグレーなイメージがつきまといますが、自炊代行のサービス自体はまったく怪しいものではありません。
「自炊代行」、よく考えれば変な言葉です。「自分で炊く」から自炊なのにそれを「代行」ですからね。矛盾しているといえば矛盾しています。しかし、ここでご紹介する自炊に関してはまったく矛盾していません。
ご紹介したように、自炊とは本などをデジタルデータに変換して保存すること、もしくはそれに関連する作業のことです。ただ、その昔のように家にスキャナーがあればできるかというとそうではなく、高機能の業務用のスキャナーがないと、さすがに高品質なデジタルデータとしてドキュメントを保存することはできません。保存する本が少なければ可能かもしれませんが、かなりの根気が必要です。本棚からあふれるぐらいの本があったり、会社のオフィスが埋まるぐらいのドキュメントがあったりする場合は、根気だけでは片付けられません。そこで頼りになるのが自炊代行サービスです。
自炊代行を利用するのに重要となるのが、コストパフォーマンスです。1冊80円(税込88円)の価格設定とページ数無制限で格安で本棚を電子化できます。さらに数々のオプションにより大切な本を高品質に電子化が可能です。
・代行利用で手間なし
自炊は、自分でやるとかなり大変な作業です。膨大な数の本や書類を、一つひとつスキャナーで読み込んでいかなければなりません。また、本の場合は裁断しなければスキャナーできれいに読み込むことができません。当然、裁断した本は処分する必要があります。これらをすべて自分でやるとなると、どれだけ時間が必要かどうかもわかりません。自炊代行なら、これらの作業をすべてやってくれます。
・機械を買わなくても済む
手間とも関わりますが、自炊代行を利用するなら、自炊用に機械を買わなくてもOKです。スキャナーは家庭用でも高性能なものは値が張ります。また、裁断機もそれなりの価格になりますので、よほど繰り返し使う人でない限りは、自炊代行に作業を依頼したほうがいいでしょう。
・本の処分の手間がない
自炊をすると片付けが大変。これは食事のほうの自炊でも同じですね。裁断、スキャン、処分と、すべてを自力でやるのは膨大な時間と労力の浪費になります。
・きれいな仕上げと多彩なオプション
自炊代行では、業務用のスキャナーを使うため、家庭用のスキャナーよりも仕上げがきれいです。スキャンの精度が低いと、ところどころに「にじみ」や「黒ずみ」などが発生し、読み取りにくいこともありますが、高性能の業務用スキャナーなら、このようなことはかなり少なくなります。
また、自炊代行では、ただデジタル化するのではなく、文字をテキスト化するような作業もオプションで選択可能です。これをOCR処理と呼びますが、これにより、MS Wordのドキュメントのように、テキスト検索ができるようになります。
スマートフォンやタブレットが広く普及したことにより、多くの人々が読書にこれらのデバイスを使用しています。Amazonを筆頭に、巨大IT企業がこの市場に次々と参入し、市場自体、ひじょうに活気があります。それにつれ、多くの人々が、手持ちの本をデジタル化したいと考えるようになりました。
手持ちの本をスキャンできれば、現在購入しているようなデジタル書籍と同じ感覚で読めます。もちろん、本棚のスペースなど必要ありません。一定量のデジタルストレージさえあれば、データとして本を保管することが可能です。デジタルデータなので当然、時間が経っても傷むことなくきれいです。デジタル化することにより、デバイス上での検索なども可能になります。
ここ数年がアナログからデジタルへの過渡期だったと考えると、自炊代行の市場は、今後も広がっていくと考えるのが妥当でしょう。
自炊は、以下のような流れで行います。ただ文字で説明すると比較的シンプルな作業に思えますが、実際に自宅でやろうとすると大変です。
・本を裁断
普通のスキャナーでは本をそのままスキャンすることはできません。そのため、裁断機を使って本をバラバラにする必要があります。したがって、本は元通りに保管したいという方には自炊は向きません。
・スキャンによりデータ取り込み
本を裁断してページごとにバラバラにしたら、スキャナーでデジタルデータとして読み込んでいきます。家庭用のスキャナーでももちろん作業は可能ですが、業務用の高性能スキャナーのほうが、仕上り・スピードともに優れていることは言うまでもありません。
・データを保存
取り込んだデータは、好みの形で保存します。そのままパソコンに保存してもいいですし、外部のストレージを利用するという手もあります。もちろん、スマートフォンやタブレットに転送しても構いません。
・本を捨てる
ページごとにバラバラに裁断した本は、保管しておいても仕方がないので処分します。ただし、大量の紙を処分するのは大変です。一般ゴミで一度に処分するのは難しいため、産廃業者に処分を依頼するのが一般的です。
すでにご紹介したように、自炊代行にはたくさんの長所があります。しかし、本という著作物が絡む自炊代行には、利用するうえで注意すべきポイントもあります。ここからはその注意すべきポイントについてご紹介していきます。
まず、著作権についてです。自炊を誰かに依頼することは、著作権法違反になるのでしょうか?
実は、すでにこの件で裁判になったケースがあります。この裁判についての詳しい説明は避けますが、業者は賠償金の支払いを命じられています。
しかし、著作権法では、自分で使用するために本をスキャンしてデジタル化(複製)することを認めています。これはその本が自らの所有物だからです。
もちろん、このスキャンしたデータを不特定多数の人が閲覧できるようにネットにアップロードしたり、販売したりする行為は許されません。
問題は、自炊ではなく、自炊を代行した場合です。この点、著作者が自炊代行を許可しないことを明示している場合には、代行に応ずることはできません。
まさに、前述の裁判となった事案がこれに当たります。ただ、それ以外の場合には、代行を依頼することに法的な問題はないと考えるのが自然でしょう。
もちろん、先にご紹介したような判例もありますが、現在は自炊業者自体がコンプライアンスを遵守して営業しています。電子化に関する法整備も進んできており、これに違反するような自炊代行に関しては、業者も受け付けていません。
自炊代行では、高性能の業務用スキャナーが使用されますが、きれいな本はきれいにデジタルデータとして取り込めても、古書は状態そのままにしか取り込むことができません。汚れている本をきれいにすることは不可能ですし、ページの黄ばみや色あせはそのまま取り込まれることになります。
本をスキャンするには、すでにご説明しているとおり、通常は裁断しなければなりません。そのままの状態でスキャンが可能なスキャナーもあるのですが、代行料金も高価になります。こうした点から、会社や学校の歴史などを記録した貴重な資料や、どうしても本自体を残しておきたいというケースでは、自炊代行は利用不可能です。
自炊代行は比較的新しいサービスです。現在、急速にこのサービスの知名度が上がってきており、元々、手間と時間のかかるサービスではあるものの、オーダーが殺到しているために時間がかかる…という事態になっている業者もあるようです。この作業の緊急性により、料金に差がつけられているのが一般的で、ゆっくりでも問題のないものなら、リーズナブルな料金で作業してくれることが多いようです。
ここからは、自炊の最大の懸念事項といってもいい著作権について、少し掘り下げてお話ししていきたいと思います。ここでは、自炊してもいい著作物についてはっきりさせましょう。
著作物は、その作者が権利を持っています。消費者は著作物を購入しようがしまいが、この著作物の所有権を得ることはできません。これを勘違いして…というか無視してデジタルデータとして大量にコピーして、他の誰かが見られるような状態にしてしまうと法律に触れることになります。
ただ、著作権法は、著作物を購入した個人や、その家族と一緒に著作物を楽しむこと自体を制限してはいません。つまり、著作物を私的に利用することは基本的にはOKなのです。ただし、家庭内という限定はあるので、友達に貸すなどの行為は問題があるかもしれません。
本を貸し借りすることは、昭和生まれの人なら当たり前のことですが、デジタル社会となった現在、これはなかなか難しい問題なのです。
著作権法は、ネット上などに勝手に後悔されている著作物をコピーした場合、そのデータは自分でも、家庭内でも使用することはできないとしています。また、たとえばコピーガードなどを違法な手段で外し、自炊することも禁じています。とにかく、法律で許容される範囲外の方法で手に入れた著作物については、一切の権利が認められないということになります。
家庭内や友達など近い関係の人であっても、著作権のあるデータを取り扱う場合は、十分に注意する必要があります。
自炊はルールを守っている限り、まったく問題ありません。著作者の許可を得られているのであれば、まったく問題なく自炊は可能です。
たとえば社内資料や学校の資料などは、会社や学校が著作権者に当たりますので、自炊することには何の問題もありません。デジタル化することで、プレゼンや社内、学内行事でもデータを扱いやすくなるでしょう。
ここまで「自炊とは何か」に始まり、さらに「自炊代行」というサービスの存在、そしてその内容についてご紹介してきました。難しい問題の絡む自炊ではありますが、改正著作権法の施行により、デジタル社会にマッチした方向に法律が向かっているという兆候が感じられます。これからの時代、インターネットのインフラを含め、まだまだ発展していくことが予想されますが、その中で自炊代行サービスが果たす役割は小さくないと考えられます。
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